| 村の中心にあった売出し中の家は、夏のバカンスを過ごすイギリス人家族が借りていましたが、家主が隣りに住んでいたこともあり、見せてもらうことができました。話を聞くと、VTTや山歩きを楽しむイギリス人、オランダ人家族に毎夏のように貸しているのだとか。石造りの家は手直しする箇所もなく、こざっぱりとして今すぐにでも住めそうです。庭に面して木造のテラスもあり、また、これだけ広い庭なら子どもたちが喜びそう、と思いつつも、いまひとつピンときません。庭の外れにある木が遠くの景観を遮っているうえ、視界に飛び込んできたのは隣家のプール!お隣りはパリジャンの別荘だそうで、「南仏ならともかく、オーヴェルニュの山の上にプールを作るなんて!」と、主人が腹を立てています。さらに、石炭を積んだトラックが1日3,4回ほど家の目の前を通るそうで、排気ガスと子どもの安全面も気になり、この家はお断りすることにしました。
「今回はもう見つからないかも」と、半ば諦めかけていると、友人が「景色の良い場所にこだわりすぎず、目先を変えて探してみれば?」と、提案。「M集落の中心にあるけれど、裏庭からの眺めが悪くない農家があるよ」というわけで、既に訪れた、友人の家から2km離れた集落に再び足を運ぶことに。4軒ほど物件を見ていたにも係わらず、見晴らしの良い場所にある家ばかり探していたので見落としていました。それは玄関のドア周りに葡萄の木が生えている石造りの家で、中庭には大きな菩提樹が生い茂っています。住まいの横には牛小屋、豚小屋、鶏小屋とトラクターを入れる納屋もあり、裏庭は800m。そこからは私たちの好きなオーヴェルニュののどかな自然が広がっています。中を見せてもらうと、家の中は土埃と2、3重にもなったクモの巣で荒れ放題。玄関を入って正面がダイニング・キッチンとなっており、薪ストーブが置かれています。床には50年代の素敵な模様のタイルが敷かれ、奥にはchaudron(豚の餌を作るための鍋釜)と井戸のポンプがあり、玄関横に暖炉つきの小さな部屋がひとつありました。2階には寝室が3つとsaloir(チーズなどの貯蔵庫)、3階は天井の高いgrenier(屋根裏部屋)となっています。息子が「ここはおばけの家?」と聞くほど、壁紙は色あせて剥がれ落ち、階段はガタガタ、壁も床も黒ずみ、どこもかしこもクモの巣でいっぱい。しかもトイレもお風呂も(シャワーすら)なく、19世紀初頭の生活様式のまま、時が止まったかのようです。値段を聞き、「少し考えさせてもらえますか?」といったものの、夫も私もこの「おばけの家」が気に入っていました。こだわっていた景観も、寝室の窓や裏庭から放牧された牛や緑の丘が広がり、まずまずの眺め。何よりも玄関前の葡萄の木と枝葉を大きく広げた中庭の菩提樹がこの家の個性となっており、建物は探していたオーヴェルニュ式の石造りの家。内装はボロ屋に近いものの愛着が湧きました。30年前に家と土地を購入した友人から見ると、高めの値段のようでしたが、「予想していた値段」と、主人。実際にここほど広くなくともかなり高い値で売られている家もあったのです。翌日急いで連絡をし、買い取ることを告げました。大きな買い物!でも迷いはありませんでした。なぜなら、ここで自分たちが暮らす風景をくっきりと思い浮かぶことができたからです。かなりのリフォームが必要になりそうだけど、めぐり巡って、理想の家に出会えたのでした。
(写真CAP)
めぐり巡って見つけた理想の家
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