| チリンチリンと駄菓子を持ってやってくる昔懐かしい紙芝居屋さん。ノスタルジックな存在だけど、これを一生の職業にしたいと思い立った人がいる。元劇団員の川上竜生さんがその人だ。彼は、「マーガレット一家」という芸術家一座を主宰し、愛知県名古屋市を拠点に全国的に活動している一風変わった紙芝居師だ。
昔ながらの紙芝居は、木枠に入った絵の後ろで紙芝居師が声音を使い分けて子ども達に語り聞かせ、お話の世界に引き込んでいく。が、そこは何でも自分色の表現を工夫せずにはいられない川上さん。まず、様々な効果音を使って、紙芝居をより臨場感に溢れたものにした。そして、それでは飽き足らず更に進化させたものが、大型デジタル紙芝居とも言うべき“絵本劇”だ。これは、絵本、演劇、音楽などのエッセンスを組み合わせて作られた、新しい試み。デジタル処理され大型のスクリーンに写し出された大きな絵本の中に描かれた動かないキャラクターと、絵の中から飛び出した川上さんら役者たちの扮する動くキャラクターがコミュニケーションを取りながら物語は進行する。バックに流れるのはオリジナルの優しく楽しいアコースティック・ミュージック。こうして独特の詩情あふれるステージができあがるのだ。
「マーガレット一家」は、リーダー川上さんの元、脚本は西本美香さん、絵は多摩美大出の日本画家てるきなたかみつさん、など約10人のメンバーから成る。舞台に立つのは、3人の役者と声優だが、ステージによっては、バイオリン奏者の黒田かなでさんや彼女の率いる4ピースアコースティック・バンド「シノノメソラ」の生演奏が加わることも。
“絵本劇”を見る子ども達の表情は真剣そのもの。「僕は生のコミュニケーションを大事にします。情報過多の現代日本だからこそ、動かない絵を使って一生懸命コミュニケーションする姿は子どもたちにとって、新鮮で魅力的なのではないでしょうか?」。
「マーガレット一家」にとって頭の痛い問題が、活動資金だ。メンバーの生活費を稼げる“生業”として活動していきたい川上さんの志とは裏腹に、「ボランティアなら是非来て下さい!」というところはたくさんあるのだが、人件費や交通費などを満たすステージ代までを払ってくれる依頼主は少ない。この春にも、フランス公演の予定が決まっていたが、資金不足で話が流れてしまったのだという。しかし、川上さんらは、「何とかして、来年の春までにはフランス公演を実現したい」と意気込んでいる。「(洗練されたイメージの)フランスで、僕らの“泥臭い”紙芝居がどのように受け入れられるのか、楽しみなんです」。
現在は、この春初演の新作「どんぐりざっぷ〜ん(仮)」の制作に集中している。「“絵本劇”とはまたひと味違った“紙芝居劇場”というものに仕上げたい」と川上さん。古いものの良いところはそのままに、現代的な手法も貪欲に取り入れ、飽くことなく進化していく「マーガレット一家」のステージ。フランスで“現代版紙芝居”はどのように受け入れられるのだろうか?
「マーガレット一家」活動の様子は、こちら。http://ehongeki.com/
|