| 気がつくと秋になっていた。
枯れ葉は舞い、長い夜がパリを包む。この号が出るときはもうパリは冬なのか、と思うと、少し腹がすいてきた。
なんか変?だって、街角のマルシェ全体がそのままキノコの山のようになっているのが、パリの秋であり、冬なのだ。腹がすいてこないで、どうします。この山にあるキノコは、当たり前だがどれを食べても、事故の心配はないし、世界中のキノコが最近は手に入る。生のシイタケ、エノキもある。もし、腹がすいて来ないとするなら、それはそれで要注意というもの。坊主なんぞは、ああー、湯気の向こうに極楽浄土が見えるという気分になる。
坊主のキノコの食べ方は、鍋。決まり。いろいろあるだろうが、鍋で決まり。毎日、鍋。春まで、鍋。だって簡単なんだもの。
鍋に根野菜をはじめとする様々な野菜、(肉や魚貝類、坊主の場合これはまずい。うまいけどまずい)豆腐やこんにゃく、そこにいろんなきのこを入れて、今日はみそ仕立て、今日はしょうゆ仕立て、海鮮つゆ、キムチ鍋、そのバリエーションもちょっと調味料やつゆのベースを変えるだけで、簡単、多様。最近の日本のはやりはカレー鍋らしい。最後にご飯を入れておかゆにするか、うどんや中華麺を入れて締めるとするか、その楽しみ方は無限に広がる。熱燗片手にハフハフすれば、パリの寒さにかじかんだ気持ちもすぐに極楽浄土、ここにありなのだ。
そりゃ、大勢で鍋を囲むは、いとたのし。誰かと二人でよろしく鍋をつつくのは、なおたのし。されど、パリの一人鍋も決して悪くない。もともとルールのない鍋料理なのだ、好きにやるに限る。浮世を離れた長い夜には、鍋が一番なのだ。
さて、話をキノコに戻す。なぜ鍋にキノコを入れるのかなのだが、まずは季節だから、そしてうまいから。
多くのキノコには、昆布のグルタミン酸、鰹節のイノシン酸と並ぶ三大旨味成分のグルニア酸が含まれ、昆布のグルタミン酸と出会うと旨味数十倍になってしまうのは有名なお話。
もちろん、おいしいだけじゃない。食物繊維、ビタミンB類、ビタミンD類、カリウム、カルシュウム、リン、鉄といったミネラルも豊富で、その上低カロリーなのだ。そのほか、コレステロール値を下げ、血圧を下げるエリタデニン、免疫力を高め、制ガン作用が期待できるといわれているβ―グルカンなども含まれており、生活習慣病の予防に一役買う食品のひとつ。季節のおいしいキノコで十分なのに、なんてお利口なんでしょ。
まあ、坊主には関係ないが、キノコに含まれているビタミンBはタンパク質と一緒に食べると、美肌効果も絶大らしい。お肌つるつるの坊主は、う〜ん、ちょっと塩梅悪い。
それでは、キノコの中で最も栄養価の高いものは何か?それは何と干しシイタケなのだ。
もちろんパリのマッシュルームだって、セップだっておいしいし、優れものなのだが、日干ししたシイタケには、カルシュウムの吸収をよくするビタミンD2が生シイタケに比べて、けた違いに含まれているのだ。さらに、カリウムもリンも食物繊維もたっぷり。
でも、せっかくの季節の恵みなんだから、干しシイタケだけでなく、エノキ、シメジ、マッシュルーム、なめこをガンガン鍋に放り込んでしまおう。きっと湯気の向こうに極楽浄土がみえるぞ。
でも、キノコはマルシェのものに限りますぞ。でないと、本当に極楽浄土に行っちゃうからね。お気をつけあれ。 |