国際漫画フェスティバル

 今回は、第一回目の紹介ページでも触れた国際漫画フェスティバルについてレポートしたい。
1月27日より4日間にかけて行われたこのお祭りは今年で32回目を数えた。人口4万5千人余りの街に約20万人を動員することから、アングレームにとって重要な行事であると察することができる。にもかかわらず、アングレーム市内とその周辺にはホテルの数に限りがある。この期間中訪問者のために、地元の若者、特に一人暮らしをしている人がアパートを提供するという習慣がある。
はっきりとしたお祭りの主旨が見えないまま、個人的に初めて見学することになった。イメージとして、漫画ファンが集まって展示物を見るのかな、程度に思っていた。実際、会場に出向いてみると、あらゆるカテゴリーの漫画展示や販売、有名漫画家のインタビュー・セッションなどのイベントが活発に催されていた。また本を買った人には、漫画家が直々にイラストを描くということで人気漫画家の前には長い行列ができていた。読者は早速買った本を会場の隅に陣取りながら熱心に読みふけっていたのが印象的だった。漫画関係者そしてファン同士がコミュニケーションを図るという点がどうやらこのお祭りの目的のようだ。
日本人の漫画家達もこのフェスティバルに毎年参加する。2003年の同フェスティバルですでに受賞している、谷口ジロー氏の「神々の山嶺」が今年は最優秀デザイン賞を受賞した。日本人を交えた討論会も多く催され、水野純子氏参加のフォーラムを聴講してみた。漫画について私個人的には特に精通していないのだが、メインストリームとオルタネティブという区分けがあるらしく、前者はいわゆる大きな出版社を通して大量生産的に作品を生み出すこと対し、後者は、日本漫画のこれまでのメジャーな路線とは一味違い、ヨーロッパ風の手法や影響が作品に見え隠れしている独特で新しい動きとし、活動している人の数も少ないという。水野氏はあまりそういったカテゴリーにこだわらず幅広く仕事をしてきたとコメントしていた。漫画を「アート」ととらえるフランス人にとってオルタネティブな路線、地味に活動し、限りなく独自のテクニックを保ちながら、グロテスクでエロチックそしてヒューマニズムが混じりあった作品が、フランス人のアート感覚を刺激するようで彼らを高く評価している。来年はもっと日本のオルタネティブに活躍している漫画家達についてさらに知識を得てフェスティバルを楽しんでみたい。

FESTIVAL INTERNATIONAL DE LA BANDE DESSINEE公式サイト
http://www.bdangouleme.com/

コニャックはCognacだけでつくられている銘酒?・・・
アングレームも含みます!



クリスマスや特別な機会の招待で、たっぷりと食事をした後にもてなされるコニャック。食後酒として消化を助ける作用があるのだそう。専用のグラスに琥珀色のお酒が少量注がれ、手のぬくもりで温めて飲む。古いフランス映画のシーンに出てきそうな光景。シャラント県の名産酒として、コニャック、ピノがある。そもそもフランスに来るまでは、コニャックがCognacという土地で造られていることさえ知らなかった。そんな中、業界第一位の生産量を誇るHennessyのガイドツアーに参加した。

コニャックは白ワイン用ブドウ種から造られる蒸留酒。石灰分を含む地質がブドウ、「Ugni Blanc」というフルーティでアルコール度が軽めにできる種を産み出し、蒸留に適しているのだそう。コニャックを中心に、西は大西洋沿岸地域、東はここアングレーム近郊、そして南部はボルドーの入り口に至るまでの一帯でこのブドウを作っている。畑は6つのサークル状に分けられており、地質によってその名称が変わる。一番良いのはCognac中心部で「GRANDE CHAMPAGNE」と呼ばれ、石灰質成分を最も多く含み、ゆっくりとした熟成力を与えるため、最高値のブドウがつくられている。収穫→圧搾→ブドウジュースを発酵→白ワイン(アルコール度数約7.5%〜10%)が出来上がる。さて、ここからがコニャック醸造の本番。銅製の大きな玉ねぎ型の蒸留器にこの白ワインをかけ、アルコール度とアロマを凝縮させる。第2回目の蒸留でさらにアルコール度と透明度を高めた液に精製する。最後に出来上がるのがオードヴィ(eau de vie)といわれる原酒で、アルコール度数は約60〜70%に保たれる。これを樽に詰めて最低2年寝かせ、若干のアルコール発散をさせながら更にオードヴィが持つアロマを引き出す。木樽の平均寿命は約40年、よって年代物のオードヴィを移し変える時には、空気に触れないよう細心の注意が払われる。この年代別、アロマ別のオードヴィをブレンドして初めてコニャックが誕生する。ツアーに一緒に参加した日本人の友人は、「そんなに手間をかけるのなら白ワインで充分じゃない。」とこぼしていたくらい厄介な製法だ。このブレンドに伴い厳密にテイスティングが重ねられ、アロマ別(バニラ香、フラワー香、スパイシー香、オーク香など)、数十種以上に細かく仕分けされる。余談だが、コニャックの会社に勤める人は、飲んでいない状態でもアルコールのにおいが染み付いているため、警察に止められた際の証明用に、社員証を常に携帯して車の運転をするそう。業界一のHennessyを筆頭に、REMY MARTIN、MARTELL、COURVOISIERと名の通った会社が順に続く。各農家、兼蒸留業者が、オードヴィまでの工程を自家で行い、これらの大会社に卸すというルートもあり、ワイン農家に匹敵する裕福な邸宅と広大な畑をアングレーム〜コニャック間のドライブ中によく見かける。Hennessyは、アイルランド人兵士だったRichard Hennessyが1765年に創業。以来8世代に渡り伝統が受け継がれている。99%は輸出、フランス国内での消費はたった1%だそう。輸出先順位は次の通り。1位 アメリカ合衆国2位 中国3位 世界各地の免税店4位 日本 この順位は、現在の世界経済縮図のようにも見える。Hennessy産の最古酒は、創業当時から七世代に渡り受け継がれたもの。1830〜1995年産のオードヴィをブレンドしたもので、1リットルあたり5000ユーロにて売店で売られていた。個人的には、カクテル風の飲み方で、コニャックとトニックウォーターまたはジンジャーエールで割る通称「コニャック・シュウェップス」が飲みやすくて好きだが、いかに手の込んだ造り方であると知ったからには、改めてストレートでも挑戦してみたい。変化に富んだ香りと味わいを感じることができるかもしれない。

Les Quais Hennessy
住所:Quai Maurice Hennessy 16100 Cognac
電話:05 45 3572 68
ガイドツアー(6〜9月のみ)要予約
入場料ひとり6ユーロより(試飲を含む)
観光局などで割引券を入手すると一人分無料となる。

Charente Maritime名物『ECLADE DE MOULES』

シャラント県の、大西洋側地域をCharente Maritimeという。この地域では、新鮮な海産物を気軽に手に入れることができる。また、松林が多くあることから、枯れ落ちた松葉を利用した、ムール貝料理が、名物の一品としてあげられる。『ECLADE』は、松葉(aiguilles de pin)のかたまりという意味が、後に転じた言葉のよう。l'ile d'Oleronあたりに行くと、ECLADE専門食堂があるが、今回は自家製で試してみることになった。

まるでドミノ倒しのようなひととき
ムール貝は、ざっと水で洗っておく。そして貝を並べていく土台を用意する。今回は、大きめのコンクリート板と木板を利用した。木板は、正方形に近い形のほうが、後で貝を並べていく時に、失敗を軽減できるように思う。さて、貝を立てられるように、釘を打って軸をつくり、それを中心に丁寧に並べていく。これが結構気合を入れて行わなければならない。写真1の通り、貝の付け根部分を上にして重ねていくのだが、ちょっと手を抜くとバランスを崩し、すぐに倒れてしまう。まさに、ドミノを並べていく時と同じような緊張感が走る。今回は、3人の仏人男性によって並べられたが、こういうところで性格や器用さが浮き出るもの。失敗なく慎重に並べていく人もいれば、何度も倒してしまい途方に暮れる人もいた。

そして、松葉をたっぷりと隠れるくらいに・・・。
やっと並べ終わる。もう絶対に倒れてほしく無いという雰囲気の中、抜き足差し足で、声までひそめながら次の準備にとりかかる。予め、集めておいた枯れ松葉を、並べた貝の上にそっと覆いかぶせる。(写真2)そして、いよいよ点火。端の部分に火をつけると、あっという間に松葉が燃え出し、高々と炎を上げる。枯れ松葉は、非常に燃えやすいことから、ムール貝を短時間で熱々に火を通す役目を果たすようだ。

ビール片手に、いただきます
並べるのに、あれだけ時間がかかった割には、食べるのはあっという間。手がすすで汚れるのは、覚悟の上で、中身をするりと開ける。開け方のコツは、貝を親指と人差し指、中指で持ち、押さえながら左右にずらすと、きれいに開けることができる。松葉の焦げた香ばしい味をベースに、しっかりと熱々の汁を含んだ貝肉を楽しむことができる。何よりも、外で手を真っ黒にしながら、ビール片手に、大勢で食べることがさらに楽しい。

ラグビー日本代表、コニャックで練習試合



4月中旬までフランス・ダックス地方で強化合宿を行っていたラグビー日本代表チーム。この滞在中、アングレームの隣町コニャックで、地元選抜チームとの練習試合が4月4日(火)に行われた。

試合前だって本格的
練習試合とはいえ、一国を代表するトップチーム対ラグビー大国フランスの名声を支える1選抜チームとのゲームである。新聞や広告でこの試合の告知があったため、多くの地元ラグビーファンが会場に寄せ、メインスタンドはほぼ一杯となった。日本チームは赤と黒、地元プロ選抜チーム『Le Cognac Country Team』は青とオレンジのツインカラー。好天の空の下で鮮やかな緑の芝生が、両チームのユニフォームの色を一層引き立てる。君が代が最初に流れ、筆者も胸が熱くなった。続いてマルセイエーズが流れ、選手と会場の士気が沸々とあがっていった。

エリサルド監督は、シャラント県の誇り!
地元ファンの関心は、日本代表チームのヘッドコーチにも集中したはずだ。Jean-Pierre Elissalde氏は、Charente-Maritime地区のラロッシェルにあるプロリーグチーム「Atlantic Stade Rochelais」の黄金時代の監督をつとめてきた人。地元ゆかりの人が、日本チームの大役に就任したことは、ちょっとした自慢なのだろう。サッカー日本代表チームに、仏人のトルシエ氏がチームを高いレベルへ持ち上げたことが記憶に新しいが、ラグビーに関してもその采配が試されるところである。

がんばれニッポン!
前半、Country Teamの完全な優勢でゲームが進んでいく。日本チームは、地元チームの予想以上のボール運びに、独自のリズムをつかむきっかけを阻まれている印象だった。会場も日本ひいきはごく少数。このあたりに日本人はほとんど住んでいない。日の丸を持参して応援すればよかったと筆者は後悔した。17−0で地元チームが圧倒して前半を終了する。

エリサルドコーチの適切な指示があったのか?後半は、日本チームがペースをつかみ始め、ボール回しも鋭く確実になってきた。地元チーム勢に比べると全体的に体が小さめの日本チーム。その分予想がつかない機敏な動きを交えたプレイに、会場から時おり驚嘆の声さえあがった。激しい巻き返しを図ったが、35−17で地元チームの勝利となった。

2006年世界ランキングで、フランスは3位、日本は17位。フランスのラグビーレベル層の厚さが見えた試合だった。2007ワールドカップアジア予選を控える中、この試合が代表チームの次なるステップへの一助となったことを願いたい。

※エリサルド氏は、2006年9月にフランスのバイヨンヌのスポーツマネージャーに日本ラグビー協会に無断で就任したことから、日本代表のヘッドコーチとしての契約は残念ながら解除となった。

自然を利用した日曜午後のEXPO



8月下旬、ついこの間までは猛暑が続いていたと思いきや、最近はすっかり秋めいている日和。
あまりにも極端すぎるこのごろの気候に、もう少し灼熱の夏を求めている人は少なくないだろう。
ここのところ雨も多い中、この日だけはどうしても天気になってほしいと願っていた人、それはここ地元アーティスト達だろう。彼らが企画した第1回アートエクスポジションが8月27日(日)午後に行われた。
『森の中の美術館』というと、わりとどこにでもありそうだが、このエクスポジションは、本当に森の中に直に作品を置くというコンセプト。アングレーム近郊『VARS』というビレッジの、あるお宅の私有地で行われた。
アングレームはアニメーション関連産業が発達しているところ。本業のアニメや映像の仕事をしながら、作品をコツコツと手がけてきた地元アーティスト15人が集まり、思い思いに『天然』の展示スペースに作品を並べる。自然との一体感、そして刻一刻と変わる日差しの具合が作品をいっそう趣きのある印象にしてくれるから不思議だ。
しかも、これも計算に入っていたのか?発起人であるナディアさんのお宅の一部は、シャラント川に挟まれたミニ半島。このこじんまりしたスペースにはたくさんのハーブが呼吸しており、そのせいか土のにおいとミントやバジルの爽やかな香りが交じり合い、思わず目を閉じてしまう。日ごろのストレスを忘れさせてくれた。穏やかな流れの川では、一艘の渡し舟で子供たちがひっきりなしに鉄ロープを引きながら行ったり来たりしてやまない。遊び心も膨らむ。
アングレームでアニメ関連の仕事をしている面々は、たいがいが顔見知りだったりする。こういう場所に来ると、必ず面識のある人に出くわす。彼らはコントラクトごとに仕事をすることから、このような機会は絶好の情報交換の場なのだ。
本当によい息抜きができた休日だった。
第一回とは言っても、第2回目があるかどうかはまだ未定だが、非常に好評だったことは間違いない。

9月恒例!クラシックカーレース「Circuit des Remparts」



1939年から開催されている毎年恒例のクラシックカーレース「Circuit des Remparts」が9月14(金)〜 16日(日)好天の中開催された。

国際漫画フェスティバルに次ぐアングレームの大きなイベント。2万人のビジターが集まると言われており、この期間中はあちらこちらで英語が聞こえてくるほどイギリス人が多く集まり、その他にもビンテージ車に乗った愛好者達が各地から集結する。年代ものの車の美しさ、洗練さを競うエレガンスコンテスト、極力オリジナルに近い保存状態を競うコンテスト、そしてシャラント県の、のどかな村々をビンテージカーが巡る「Le Rallye Charente International」などを含め、城壁に囲まれた旧市街の一部をサーキットにした本戦レースがこのイベントの一番の目玉となる。

クラシックカーレースというと、単に古い車が列を連ねてトロトロ走る程度ぐらいに思われていないだろうか?筆者はそう思っていた。コースは全長1279mで、第一回目の1939年以来変えていないそうだ。シケイン、ヘアピン、ストレートを盛り込んだ旧市街の石造りの建物の中を最高時速180キロ(GTSクラス)で駆け抜ける。想像以上に本格的な自動車レースであることは間違いない。

レースはクラス別けされ、23分または17周で出されるタイムで競われる。BUGATTI(1920〜30)、Vintage (1920-30)、Post Vintage (1931-1949)、Sport-GT(1950-1960)、GT-GTS-GTP/Tourisme (1960-1970)、JAGUAR XKなど、素人目から見ても時代を経るごとに車が進化していくことがよくわかる。レースに参加するドライバーも根っからの車好きというようなビンテージドライバー(年配男性)がハンドルをさばく。

時代の最先端技術を「マシン」に託すF1レースの現場の轟音も凄いが、職人がひとつづつ丁寧に「車」を造りあげていく過程を感じさせるクラシックカーのボディや内装、そしてエンジンからの深い爆音を聞くと、味わいと歴史を感じ熱くなってくる。

走行コースは完全に封鎖され有料でしか見ることができない。今回10ユーロ(注)の券で自由に場所を変えて見学したが十分に堪能できたと思う。この時期にアングレームに立ち寄る機会があればぜひ見ていただきたいイベントである。

(注)2007年現在の入場料:パドック、トリビューンのブレスレット20ユーロ、入場と自由席のトリビューン10ユーロ。プログラム2ユーロ。毎年変わる同イベントのポスター販売も人気